税制適格ストックオプションの権利行使価額について

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信託型ストックオプションの取扱いに関する議論をきっかけに、国税庁が2023年5月に「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表しました。このQ&Aの公表がストックオプションの権利行使価格に関する評価の実務に大きな影響を与えています。税制適格ストックオプションを発行するにあたっては主に以下のような注意点があります。

税制適格にならない場合がある。

税制適格ストックオプションとするための要件のひとつに、「権利行使価額をストックオプションの付与に係る契約時の株価以上とすること」があります(措法29の2条1項3号)。
契約時の株価の算定について、非上場会社である場合は、一定の条件の下、財産評価基本通達の例によって算定することもできることがQ&Aで明確にされました。
これにより、純資産価額方式により評価することで、契約時の株価を1円としても税制適格の要件を満たすケースが出てきたわけですが、以下の記載に注意する必要があります。

問7(注4)
「純資産価額等を参酌して算定した価額については、一定の条件の下、財産評価基本通達の例によって算定した価額とすることができますが、特例方式と異なり、著しく不適当と認められる場合、例えば、財産評価基本通達の例により算定した普通株式の価額が会計上算定した普通株式の価額の2分の1以下となるような場合には、選択することはできません。

この他にも注意すべき点がありますので、税制適格の要件を満たさないSOとなってしまうことを避けるためにも、以下のQ&Aを一読されることをおすすめいたします。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/241130/pdf/0024011-017.pdf

会計上、株式報酬費用が計上される場合がある。

Q&Aの公表により、ほとんどのケースで、税制適格ストックオプションの要件を満たすための契約時の株価と会計上の株価との間に差異が生じることとなりました。権利行使価額が会計上の株価よりも小さい場合には、その差額を「株式報酬費用」として販管費に計上します。株式報酬費用が計上されると、会社の営業利益が減少します。
会計処理の概要について、以下の経産省の資料がわかりやすくまとまっていますのでご紹介いたします。

2025年2月 経済産業省「スタートアップの成長に向けたインセンティブ報酬ガイダンス」P21  

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stock_option/so_guidance.pdf

会計上の株価と、税務上税制適格要件を満たす株価に差異がある場合には、ストックオプションを付与する会社側と、付与される従業員等の側との利害を調整する必要があると考えています。権利行使価額が高いほど会社にとって有利であり、低いほど付与される従業員等にとって有利であるためです。

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