IPOや事業承継をした後に注意したい、個人に関する税務上の手続き

税理士・公認会計士の伊勢です。ご覧いただきありがとうございます。

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・年商1億円以上の会社
・上場子会社及び上場準備会社
・M&Aにより規模の拡大を目指す会社

IPOや事業承継をした年について、株式を売却した場合や株式の贈与を受けた場合には、所得税や贈与税の確定申告が必要になることは多くの方が認識していると思いますが、人によっては「財産債務調書」を税務署に提出する必要があります。

財産債務調書とは

財産債務調書とは、保有する財産の種類、数量および価額ならびに債務の金額等を記載した調書とされています(国外送金等調書法6条の2第1項)。端的にいえば、12月31日時点で保有している財産や債務を書面に記載し、税務署に提出するというものです。

国税庁 「財産債務調書」の記載例より

提出義務者

提出義務者は、次の1または2のいずれかに該当する方です(国外送金等調書法6条の2第3項)。

1 所得税の確定申告書を提出する必要がある方または所得税の還付申告書を提出することができる方で、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産またはその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方

2 その年の12月31日においてその価額の合計額が10億円以上の財産を有する居住者の方(上記1に該当する方を除きます。)

1の「国外転出特例対象財産」には株式が含まれます

したがって、例えばIPOした会社の大株主である個人や、事業承継により株式の贈与を受けた後継者は、2の要件を満たし提出義務者に該当する可能性があります。また、例えば以下のような場合には1の要件を満たし、財産債務調書の提出義務者となります。

ケースA

・IPO時に株式を売却し売却益が1,500万円発生
・同年の役員報酬が1,000万円
・同年の12/31時点で保有する株式や預金等の財産総額が3.5億円

ケースB

・事業承継によりその会社の株式の100%を贈与により取得
・役員報酬が2,400万円
・12/31時点で保有する株式の時価が1.5億円

飴と鞭

財産債務調書を提出期限内に提出した場合に、財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その財産または債務に係る過少申告加算税または無申告加算税(以下「過少申告加算税等」)が5%軽減されます。

他方、財産債務調書の提出が提出期限内にない場合または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産もしくは債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分であると認められる場合を含みます。)に、その財産または債務に関して所得税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されます。

提出期限は、その年の翌年6月30日です。
該当する方は期限内に忘れずに提出しましょう。